風は囁く「君と輝きたいから」
「やり過ぎるなよ。本番はアイツらが来てからだからな」


「弾いてくる」

街頭演奏には、自由に弾ける解放感がある。

通りすがりや、ただ寛ぐためだけ其処にいる人々、音楽に興味のない人々の耳を、自分の演奏で振り向かせる、緊張感と快感。

天才ピアニストと言われている父、周桜宗月へのコンプレックスでいっぱいだった僕に、師匠が課した荒療治が街頭演奏だった。

中学2年生だった僕。
当初は、演奏すること事態が恐くて堪らなかった。

念入りに練習し、完璧に仕上げた曲が、街頭に立つと全く弾けない。

ヴァイオリンを構えると、全身が震えだし、冷や汗が出る。

不甲斐なさ、情けなさ、上手く弾けない悔しさに、涙が溢れ出す。

野次や罵倒を浴びながら、満足できる演奏ができるまで、1年以上かかった。


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