風は囁く「君と輝きたいから」
安坂さんは、このあと学オケに戻って、第九コンサートの練習らしい。


「ウジェーヌ・イザイコンクールには、大学サボってマスターを連れて聴きに行ってやる」

理久は、冗談みたいに笑って言う。

でも理久なら本当に、大学をサボって聴きに来るかもしれない。

マイスター、ジョルジュはオケの引き継ぎを済ませしだい、ウィーンに戻るらしい。


「周桜、連絡しろよ」


「如月さん。Vを送ります、スマホ動画でたくさん」

Nフィルのコンマス如月さんは、向こうの女性に興味があるのかもしれない。


「ちゃんと、ご飯を食べなさいよ。ガリガリで頼りないオルフェウスなんてモテないんだから」


「妹尾さんは、最後までお局様だな。畏まりました」

妹尾さんは、綺麗な顔に似合わない言葉で、僕を最後に苛めたつもりなのかもしれない。

母は何も言わずに見守っている。

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