風は囁く「君と輝きたいから」
留学を決め、様々な手続きをしながら、主治医からの厳しい留学条件を満たすために、ずいぶん手を煩わせた。

父やお世話になる師匠とも、何度も連絡を取り合い、話をしてくれたし、アドバイスをしてくれた。

元師匠リリィの思いが宿るヴァイオリン「グルネリ」も先日、保険をかけ頑丈に梱包し空輸した。

千住は僕が元師匠リリィのヴァイオリンを留学先へ送ったことに、ひどく感動していた。


「あなた、緒方さんを泣かせたら、わたしが許さないんだから」

千住はそういって胸を張り、腕組みをする。


「君は本当にリリィと血が繋がっているとは……小百合って絶対に名前負け……」


「ギャーッ!? し、詩月さん!!」

遥が慌てて僕の口を塞ぐ。


「ダメだよ、それを言っちゃ」


「失礼しちゃう」

頬をぷくりと膨らませた千住の顔を可愛いと感じた。

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