風は囁く「君と輝きたいから」
えっ!?と、思わず何度も目を擦り、周桜さんを見てしまう。

音楽プロデューサーが「完璧だ。上出来だ」と、1発OKを出した。

金管楽器の3人も満足気だった演奏に、周桜さんは大きな溜め息をついた。

「すみません、もう1度弾かせてください。今の演奏では納得できない」

真剣な顔で願い出た。

俺は聖諒の、オーケストラ部次期コンサートマスターと言われている安坂さんの、言葉を思い出していた。

――周桜は潜在能力を引き出す術を知っている

2度目の演奏、3度目の演奏でも、周桜さんだけが納得せずに、首を横に振る。

「君、申し分ない演奏だが何が気に入らないんだ?」

「全部です。聖諒のオケ部、金管楽器精鋭の演奏が、今の演奏で全力だとは思えません」

昴と空が、OK雅でたのにいい加減にしてくれと、不貞腐れた顔をしている。
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