風は囁く「君と輝きたいから」
――「周桜の演奏の先には聴き手がいる」

俺の頭の中で、安坂さんが言った言葉とCMプロデューサーの言葉が、シンクロする。

「周桜詩月の演奏には心がある。どうだ? 胸に迫ってこないか?」

周桜さんたちの弾く「Jupiter」がダイレクトに、心を揺さぶる。

胸が熱くなり、どう言葉に表していいのかわからない。

ヴァイオリンを弾く周桜さんの優しく暖かい顔と、口紅「ジュピター」のイメージが合致する。

スタジオ内は窓もないし風もないのに、新緑の爽やかな匂いが香っている気がする。

ヴァイオリンを奏でる周桜さんの姿は、あまりにも綺麗で輝いていた。

聖諒学園大学の正門に建っていた、ヴァイオリンを弾く女神像を思い出させた。

周桜さんたちのアンサンブル演奏が、最後の1音を弾き終えた時、俺の目には涙が溢れ、今にも零れそうで、慌てて涙を拭いた。
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