風は囁く「君と輝きたいから」

桃香さんはサッと、スケジュール帳を開いて確認し「わかりました」と応える。

音楽プロデューサーは戸惑いつつ、録音したデータを再生し素早く確かめた。

桃香さんは音楽プロデューサーから今、録音したばかりの「Jupiter」のデータを受け取り、丁寧に挨拶をした。

「ＣＭの出来上がりが楽しみだ」

音楽プロデューサーと熱く握手を交わす。

「周桜は落ち着くまで暫く休ませる」

ガラス越しにＣＭプロデューサーが言う。

「お願いします」

桃香さんは深く頭を下げた。

俺たちは周桜さんの様子を気にしながら、次の仕事に向かう。

ＣＭプロデューサーの腕に抱かれた周桜さんの青い顔が、目に焼き付いてはなれず、トロンボーン奏者の学生の叫び声が耳にこびりつき、いつまでも響いていた。

「彼は思っていた以上に弱いわね」