風は囁く「君と輝きたいから」
桃香さんは小さく呟き、目尻を下げた。

1日の全スケジュールを終え、宿舎に戻る車の中でスマホを取り出した昴の着信に、周桜さんのメールが入っていた。

――お疲れ様。
すまなかった。CM撮影を延ばしてしまって……。
少し強めの地震が8時過ぎにあったが、大丈夫だったか?
明日はよろしくたのむ


要件だけを一方的に伝えた、絵文字も顔文字もないメールだった。

「何や言うねん。ムカつくメール。返信せなあかんかな。時間遅いし、あの人のせいでスケジュールが変更やのに」

昴が面倒臭そうに訊く。

時刻は23時過ぎだ。

着信時間は20時半になっている。

「もう寝てるだろ。倒れた後だもん」

「『すまなかった』とか、謝られてもやな。何でや。たかがBGMに、倒れるくらい一生懸命になるやなんて、あいつイカれてんで」

昴がメール画面を見つめて、嫌味たっぷりに言う。

「貸して」
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