風は囁く「君と輝きたいから」
俺たちが話をしていると、周桜さんが「お世話になります」と言いながら現れた。

「真面目に練習してるのかと思えば、呑気に雑談ですか。周桜宗月と演奏がそっくりだと言われた時期が、確かにありましたけど」

「ウソだろ!? 天才ピアニスト周桜宗月と演奏がそっくりなんて」

 空が楽器を取り落としそうになり、慌てて握り直す。

「父と比較されるのはまっぴらだ」

険しい顔をした周桜さんを相当なファザコンで、冷たく遠い人だと思った。

音楽プロデューサーに「周桜Jr.」と言われた時、彼を睨んでいた周桜さんの凍てついた目が思い浮かぶ。

話題を変えたほうがいいと思い、どうしてヴァイオリンの街頭演奏をしているのかを訊ねてみる。

周桜さんは「ヴァイオリンの元師匠の勧め」と愛想なく答える。

「他校の学生にも追っかけがいるくらいだ。年齢層も関係なしにファンもいるよな」
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