風は囁く「君と輝きたいから」
トランペット奏者の学生がドヤ顔をする。

「お前の弾き方は独特で運指が怪しいだろ。ヴァイオリンを弾いている後輩があれで弾けるのが不思議だと驚いている」

「ヴァイオリンの師匠に毎回、喧しく叱られていますよ」

「なんだ、気づいているのか。まあ、デタラメな弾き方がカッコイイというファンも多いみたいだけど」

「Nフィルで弾くようになってからは、ストーカーすれすれの追っかけもいて、1ヶ月ごと演奏場所の順番をシャッフルしているんですよ」

周桜さんは表情を変えずに話す。

「まあ恐い」
 
俺は思わず声に出す。

追っかけの話は安坂さんからも聞いたが、本人から聞いても信じられない。

「なあ、愛器「ガダニーニ」でさ、海岸通り公園で『Jupiter』のアレンジを弾いたら最高なんじゃないか? CMの演奏をもっと崩して」
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