風は囁く「君と輝きたいから」
俺は周桜さんの顔を覗きこみ、額に手を当て思わず「熱っ」と呟き、周桜さんの額からパッと手を離した。

「遥、大丈夫だから」

呟いた周桜さんの声は微かに震え、掠れて聞き取りにくい。

「我慢しなくていいんだ」

 俺は周桜さんの肩をギュッと、抱き締めていた。

「……遥?」

 ハッとし周桜さんから体を離すと、周桜さんは小さく笑って言った。

「微熱だから」

 嘘だと言いたかった。

周桜さんの笑顔は優し過ぎて、遠回しに「黙っていろ」と言われているのを感じ、俺は渋々頷いた。

「周桜くん、近くで悪いけど最寄駅で良ければ乗っていきなさい」

「すみません。助かります」

 周桜さんは桃香さんの呼び掛けに、顔を上げ立ち上がり頭を下げる。

「桃香さん、周桜さんに見とれてるとこゴメン。着替えるから」
< 50 / 325 >

この作品をシェア

pagetop