風は囁く「君と輝きたいから」
「台本も歌も、難しい言い回しや漢字がある。その意味がちゃんと理解できなきゃ、役になりきれないし、感情をこめて歌えない。毎回どういう意味? どう読む? 誰かに聞くのは簡単だが、自分で理解したほうがいい。人にメッセージを伝える仕事をしていくんだから」

 俺は桃香さんに言われたとしても、きっと素直に聞けなかったと思う。

「何やねん、偉そうに」

 昴はボソッと呟いたけれど、その顔に険しさはなかった。

「授業に出なくても勉強できるかな」

「ああ、僕は小中学校は入退院の繰り返しだった。高校も1年の時は出席日数ギリギリで、授業開始20分以降は保健室でさぼっていた」

 周桜さんのカミングアウトに、目が点だった。

「試験はいつも保健室で受けた。まともに登校したのは聖諒に転校してからだ。それでも欠席や遅刻早退は、かなり多かった」

「えーーっ、それで聖諒大学の特待生!? 周桜さんは元から頭良いからだろ」
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