風は囁く「君と輝きたいから」
 昴が鬱陶しげに漏らす。

詩月さんの眉がピクッと動き、起こしたかと心配になったが、詩月さんは顔をしかめただけで起きなかった。

ホッと胸を撫で下ろしてみたものの、どれだけ疲れているのかと今度は不安になる。


「……違う……」

 微かに聞こえた声。

「へぇ~、寝言」

 暢気に言い笑おうとした瞬間。

「……ローレライ……ない」

 詩月さんは言いながら、ギュッと俺の手を握りしめ、指にグッと力を入れる。

丁寧に手入れをしている詩月さんの爪が食い込む。

「ローレライじゃない……」

 ハッキリと聞こえた悲痛な声。

「詩月さん!? どうかした? 具合が悪い? ローレライって何? 詩月さん!!」

 俺が詩月さんの肩を掴んで呼ぶと、詩月さんは身を捩り俺の胸にしがみついてきた。
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