風は囁く「君と輝きたいから」

車が横浜駅に着くと、安坂さんが俺たちの車を見つけ大きく手を振った。

桃香さんは安坂さんの立っている側で、車を停める。

黒っぽい乗用車から男の人と女の人が降りてきて、桃香さんに挨拶をした。

「ありがとうございます。岩舘理久です。詩月とは幼なじみで、兄が詩月の主治医をしています」

　岩舘さんは表参道辺りを颯爽と、歩いていそうだ。

岩舘さんの隣で女の人が、ペコリと頭を下げた。

「緒方郁子です」と淑やかに名乗った。

桃香さんは簡単に自己紹介をした後、状況を説明する。

「ったく、人一倍体が弱いくせに加減を知らない。アイドルとコラボなんて、俺は反対したのに。詩月は何を血迷ったのかヤル気満々だし、学長はノリノリ、プロデューサーと一緒に、詩月のおふくろさんを丸め込んでＯＫさせて。兄貴もなんで許可したのか」

岩舘さんはぶつくさと、口を尖らせ文句を言う。