風は囁く「君と輝きたいから」
詩月さんの反応が、あまりにも真面目でクスッと笑ってしまう。

「遥? 一人じゃない。仲間もいる。応援してるファンも支えてくれるスタッフ、それにマネジャーもいる」

 離れない俺を優しい声で慰める。

昴と空が俺を詩月さんから無理矢理に剥がそうとするのを逆に引寄せ、俺の頭をそっと撫でた。

「何より頑張ったぶんは誰に何を言われようと、全部自分のものだ」

 ハッキリと気持ちをこめ、自分自身に言い聞かせるように言った。

全てを包みこむ暖かい声だった。

華奢な詩月さんの姿が一瞬、頼もしく見えた。

俺たちは詩月さんのことをまだ何も知らないと思った。

安坂さんや岩舘さん、金管楽器の精鋭メンバー、CMプロデューサー……etc.俺たちは彼らに聞いた話でしか、詩月さんを知らないと思った。

「周桜さん、わざわざチケットを?」


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