風は囁く「君と輝きたいから」
「いや。マエストロ、ジョルジュと待ち合わせだ。サンライジングホールで」
「パイプオルガンのあるホールだね」
俺は聞き返し、やっと詩月さんから離れた。
手渡されたチケットをじっと見る。
「そうそう、今日は下見だ。緊張して弾けないなんて恥ずかしいからな。それに、パイプオルガンを観たくて」
「威厳があって神々しい音だよね。、パイプオルガン」
ピアノを習っていたことがある空は、教会のピアノを思い出したようだ。
「そう、、世界屈指のパイプオルガンだ」
詩月さんは、無邪気な笑顔で言う。
「妬けるな。ピアノに会いにいくのに、そんな顔するなんて」
俺はワザと拗ねた口振りで言う。
詩月さんがピアニスト志望だということを改めて実感する。
詩月さんはどんなピアノ演奏をするんだろうと思う。