期間婚〜彼と私の微糖な関係〜
結局その日、若社長が家に戻ることもなく
翌日、会社でその訃報を聞かされた。
前社長は本当に人柄の良い方だっただけに、その訃報に涙する社員はたくさんいた。
私も前社長は好きだった
それなのに…
一粒の涙もでず
最後に会った日、婚約指輪を見て微笑んだ
あの穏やかな表情しか思い出せなかった。
仕事の都合もあり、お通夜に参加したのは上の人達だけで
私たち一般の従業員は個人的に参列できる人だけが行くことになった。
私は…わざと先輩に譲って会社に残った。
行けなかった。
行くのが恐かった。
だって…私は
前社長を騙していて
どんな顔で会いに行けばいいのか分からなくて…。
でも、若社長のそばに寄り添いたい気持ちと
そうする事が不可能な現実の狭間で、身動きがとれなかったんだ。