夢色約束
「香里奈ちゃん、さっき言ったよね?」


「え?」


「行ってあげて。って…光くんに」


「っ…」


「それって、どうでもいいってことでしょう?」


「…それ、は……」


「今さら、好きなんて言わないよね?」


「…」


「今、香里奈ちゃんがどう思ってるのか知らない。私はまだ全然光くんと接してないから余裕だとか、思ってるのかもしれない」


「そんなことっ!」


「香里奈ちゃん、気づいてるよね?」

なにを…?


「光くんがいつも一人でいる理由」

理由…?


「光くんは、小学校の時までちゃんと友達と一緒にいたわ」

確かにそうだ。

光はいつもだれかと一緒に笑ってた。


「香里奈ちゃんと一緒にいるようになってからよ。一人になったのは…」


「え…?」


「その意味、ちゃんと考えて」


「奈留ちゃ…」


「私は…香里奈ちゃんには負けない。負ける気、ないから」

奈留ちゃんは席を立ってそのまま出て行った。






私もトボトボと家に帰っていった。

家に帰れば、光が待っている。

私は、帰りたくなくて、公園にブランコに腰掛けた。


「余裕なんて…思ってないよ」

余裕なんて、あるわけないじゃん。


「不安ばっかりだよ…」

そんな小さな声は頬を滑る涙とともに地面を濡らしていった。
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