夢色約束

夏休み

「はぁ~~~~~~~~夏休みだぁ~~~~!!」

挨拶をした後、由羅は大きく伸びをした。

由羅は態度を変えることは無かった。

時々私を見る視線の変化や、光を見ていることはあったが、ほんの微かなもので、ほとんどなにも変わりなく私たちは夏休みを迎えた。


「たくさん遊ぼうね!香里奈」


「うん、どこに行こうか~」

だから、私も気づかないふりを、知らないふりをした。

小さな胸の奥の痛みさえも隠し続けた。


「私は海と~プールと~遊園地と~」

そう指を折りながら言う由羅。


「あ、私水着買いに行かなくちゃ」


「私も行く!」


「どっか行くのか?」

私たちの会話に入ってきたのは…


「光!!」


「俺もいるよ~」

そういって出てきたのは那月くん。


「水着買いに行こうって話」


「どこに?」


「どこって…ショッピングモール?」


「なら、俺も行く」

いや、行くって…


「あのねぇ…」

水着買いに行くのについてきてもらえるわけないじゃん!


「俺がそこに入って行かなきゃ何とかなるだろ?」


「それは…」


「俺も欲しいからその間俺も見る」


「別に一緒に行かなくても…」


「いいだろ、別に。…ダメか?」

うっ、そんな傷ついたような顔しないでよ。


「…ダメ、じゃないけど……」


「なら、いいだろ」


「……はい」

そう半ば強引に押し切られてしまった。


「ちょっと光くん~?私が先に言ってたんだから私も一緒だからね~?」


「俺も俺も~」


「那月は来なくていい」

冷たくあしらう光。


「なんでだよ~!!」

そんな二人のやり取りを見て私たちは笑った。

なにも、変わらない。

こんなにも平和。

楽しい…なのに。

日を追うごとに胸の痛みは大きくなるばかりだった。
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