夢色約束
「那月くん、ここ、屋上だよ?」

私はボソッと言った。


「光、ここに呼び出されてるんだよ」

ええー!!


「じゃあ、ここにいない方が…」

いい。と、言おうとしたとき…


「…私、光さまのことが好きなんです!」

…!!


「…」


「この前、日直の仕事で困ってる時に、助けてくれて、それから、気になってて…」

そうだよね、王子様って言われてるくらいだもん。

光は、誰にでも優しいし、先生にも頼りにされてて、成績もいいし…

モテないはず、ないよね…。

本当は、執事じゃなかったら、私のそばになんて、いないはずの人で…


「…ごめん。気持ちは嬉しいんだけど、応えられない」

ホッ…!

私、最低だ…。

今、光が断って安心した…。

ほんと、最低だ…。


「俺、好きな人がいる」

……!!

…え?

好きな人?

光に?

そんなの、私、一言も…

『お姫様は天然で学園の王子様の隣にいる』

お姫様…?

無理、だよ。

学園のお姫様になんて、かなうはず、ないじゃん…。

ただでさえ、いっつも迷惑ばっかかけてるのに…

光…。

いままで、私のそばにいて、誤解されるかもしれないのに…どう思ってたの?

ああ、そっか。

誤解なんてされないよね。

学園の王子様が私みたいな子と誤解なんてされるはずない。

……嫌、だな。

もしも、光が私に言ってきたら?

『好きな子がいる』って。

その時、私は受け入れられるの?

『頑張れ!』って、そういってあげられるの?





こんなに、こんなにも、好きなのに…?


「香里奈ちゃん?」

那月くんが心配そうに顔を覗き込んできた。

スッと指を目元にあてられる。

そして、気づいた。


私、泣いてる…?
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