夢色約束
「大丈夫?」


「う、ん」


「…もどろっか」


「ごめっ、わ、たし…」


「いいよ。何も言わなくて。行こう?」

私はその言葉に頷いて、那月くんの後をついて行った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「…」


「ごめんね。那月くん」


「いや、俺の方こそ、ごめん」


「私、急に泣いたりなんかして」


「俺、わかってたんだ。告白されてるだろうって」

そうだったんだ…


「なのに、香里奈ちゃんをその現場に連れて行ったりして、ごめん」


「那月くんは、悪くないよ」


「香里奈ちゃんが光のこと好きだって聞いたばっかりだったのに…」


「那月くん。ありがとう」

私は、那月くんがいなかったら今もまだ泣いてた。


「え?」


「ここまで、ついてきてくれて」


「そんなの…」


「光にはもう連絡したから、もう少ししたら来ると思う。だから…帰っても大丈夫だよ?」

本当はもっと前に帰るはずだったんだよね?


「…わかった」


「ここまでいてくれて、ありがとう」


「…香里奈ちゃん」


「なに?」

帰ろうとしていた足を止め、那月くんはこっちを向いた。


「…………光のそばに、いてやってね?」


「…!!」


「あいつ、香里奈ちゃんがいないと、ダメダメだからさ」

はは、と笑った那月くんは言って、教室を出て行った。

違うよ。

ダメダメなのは、私の方。

光がいないと、何もできなくて。

いっつも助けてもらってて。

離れてあげることが、光にとっての一番いいことのはずなのに、それすらできない。

そんな勇気すらもないの。


「光がいなかったら、私はきっと壊れちゃうの」

そういった私の声は、消え入りそうで。

そんな言葉も気持ちも、誰にも、届かなかった。

誰にも、気づかれなかった。
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