夢色約束
最後の願い~光 side~
人混みに紛れながら、出口を目指す。
やけに右側が涼しく感じた。
右手の温もりはなくなり、夏なのに、驚く程冷たかった。
「ダッセ、俺」
なに、香里奈に言わせてんだよ。
あいつは、全部知ってた。
俺が家を出ることも。
このあと、どこに行くのかも。
荷造りが終わっていることだってきっと…
あいつに、1番辛いことをさせたんだ。
あいつは、あんなことしなくてよかったはずなのに。
苦しまなくてよかったはずなのに。
「なにやってんだよ、俺は…」
なに1番傷つけたくない奴、自分で傷つけてんだよ。
1番苦しめたくない奴、苦しめてんだよ。
なんで、あいつを1人にしてんだよ。
約束したのは、俺だろ。
そばにいるって、奥さまがいなくなったとき、約束したくせに…