夢色約束
ガチャ

「…お嬢様?」

シェフたちが目を丸くする。

そりゃそうよね。

いきなり走りこんで来たらそうもなるわ。


「少し借りてもいいですか?」


「なにか作るのでしたら私たちが…」


「いいの。私が作りたいから」

じゃなきゃ、意味ない。


「でしたら、どうぞ。お好きに使ってくださいませ」


「ありがとうございます」

私は小さなあいているスペースに立った。


「やはり、光さんとお嬢様は似ておられますね」


「え?」

私と、光?


「光さんも、いつもそこを使っておられるのですよ」


「そうなんですか?」


「ええ。私たちが前いたところでは、食事が終われば、片付けや、その後の紅茶はは私たちに任せるのですが、キッチリ後片付けまでしてから、終わられます」

忙しいのに、本当にすごい方です。と、シェフはそういった。


「そう、なんですか」

光。

あなたは本当に…


「まあ、時々本当に忙しそうにしていて、年上ながらなにもできず、少々悔しいのですがね」

はは、とシェフは笑った。


「あの、これからも、光のこと、見てあげてください」


「え?」


「私が言うのも変なんですけど」

私は笑う。


「私の前じゃ、なんとでもない。という顔しかしてくれなくて。弱さを見せるのが光は好きじゃないし、得意じゃないから。だから…見ていてあげてください。光のこと」


「…もちろんです」


「なにか、変化があれば、いつでもいいです。どんなに小さくても、教えていただけますか?」


「かしこまりました」


「ありがとうございます」


「本当に、お嬢様は光さんのことを思っておいでなんですね」


「な!」

私、ここにもバレてるの!?


「うらやましい限りでございます」


「どうぞ、お好きにお使いください」

そういったシェフさんは、その場を去って行った。

そうだよ、私は作らなくちゃ!!
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