夢色約束
桜色

恋人役

「……様、お嬢様、起きてください!」


光の、声がする……光の……声が…ん?

光!?

ハッと目を覚ます。


「やっと起きてくださいましたか」


はぁ…と呆れたように私のベッドの横に立ち言う光


「な、ななななんで光が……」


「奈倉が頼んできたのですよ」


「早苗さんが?」


奈倉早苗さん。私のメイドさんで、いつも起こしに来てくれる人。


「香里奈お嬢様が起きてくれないので起こしてきてくださいますか、とね」


そう、香里奈お嬢様というのはこの私、

水月 香里奈(みつき かりな)のことだ。


「まったく、お嬢様はいつもいつもなかなか起きずゴロゴロと……」


そして、起きた私の横でブツブツと文句を言っているのが

五月 光(さつき ひかる)。私の幼馴染兼、専属執事で、私と同じ高校1年の16歳。

そして、私の……








好きな人。


「だいたい、いつもそんなに……」

まだ、言ってたのね……。


「光!お説教は後で聞くから!早くしないと遅れちゃう!」

光がいたら着替えれない!


「まったく……誰のせいですか誰の!」


「ごめんなさい」

光に強く言われ、思わず謝る。


私たちは幼馴染で同い年ということもあり、光も敬語は使うが言うときはちゃんと言ってくれる。


敬語は嫌だって、言ってるんだけどな〜

敬語は嫌いだ。


昔、対等の立場として接していた分、敬語を使われると距離を感じてしまうから。



「お嬢様、朝食の用意はできております。私は先に行っておりますのでお急ぎください」


「はーい」


光は呆れたように笑ってお辞儀を軽くし、部屋を出ていった。


「好きな人に寝顔見られるとか………最悪」


私は急がなきゃいけないのをわかっていながらも、項垂れた。
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