夢色約束
私はその日から、那月くんといることが多くなった。
那月くんは昼休み、放課後。
なにを言ったわけでもないのに、笑って来て、そばにいてくれた。
「那月くん、いいの?」
「んー?なにが?」
パンを頬張りながら言う那月くん。
「だって、最近私のところに来てくれるばかりで、友だちといれてないんじゃ…」
「俺の本当の友だちなんて、そんなにいないよ」
「あんなに人気者なのに?」
「人気者なんかじゃないよ。ほんとに人気者なのは光。隣にいる俺は"おまけ"だよ」
「そんなこと…!」
「もし仮に、俺が人気者だったとしても、やっぱり信用できるのは、あいつなんだよな…」
「那月くん…」
「だから、俺はあいつが大事にしてた香里奈ちゃんのそばにいる」
「…ありがとう」
名前を言わず、『あいつ』って言い続けるのは那月くんの優しさ。
その名前に敏感になってしまう私への配慮。
あなたの親友が、この人でよかった。