夢色約束



「それより、奈倉」


「あ、はい」


「なにか用があったんじゃないのか」


「あ、そうでした。お嬢様、先ほどお電話がありました」


「電話…?」

珍しいな…


「佐伯(さえき)様からです」


「那月くん?すぐ行きます」

なにかあったのかな?


「じゃあ光… また、あとで」


「ええ、行ってらっしゃいませ」

綺麗に一礼する姿は変わってない。

それを見て、少し泣きたくなったのは秘密。

光が新しい講師ってことは、私の専属はまた光になるってこと。

また、一緒にいられる…。

そばにいられる…

それでも素直に喜べないのは………


『婚約が決まった』

この話がうまくいくように、光に手伝ってもらうってことだから。

好きな人に、他の人と一緒になるのを手伝ってもらうなんて、…


もう、どうしようもない…
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