夢色約束




「香里奈」

光が私の方を向いていた。


「な、なに⁉︎」


「どうした」


「なにが⁉︎」


「挙動不審。朝から様子がおかしいぞ」


「おかしくない」


「目、そらすな」

いつ間にか私の前にいた光に顎を取られ、強制的に目を合わせられる。

目を伏せたい衝動に駆られても、なぜか目をそらせない。


「なにがあった」


「なにもない!」


「嘘つくな」


「嘘じゃない!」


「香里奈」

必死の否定もその声で制される。


「〜〜〜っ」

耐えられなくなって、軽く光を押すと、思いの外簡単に離れた。


「なぁ、」

光を見ると、その顔は切なげに目を伏せていた。
< 237 / 261 >

この作品をシェア

pagetop