夢色約束




「俺……」

ゆっくりと開いたその瞳が、私を捕らえる。


「………………帰ってきてよかったか?」

私は、なんどこの人を傷つけるんだろう。

そんな言葉が聞きたかったわけじゃない。

むしろ、聞きたくない言葉だった。

嬉しくないわけがなかった。

何よりも望んだことだった。

なにをして欲しかったわけじゃない。

ただ、そばにいてくれることが。

ただ、笑っていてくれることが。

私の幸せでもあったから。

こんな顔、させたくなかった…………。


「ごめ、………」

私は、何を謝ってるの?


「わりぃ……なんでもねぇわ。忘れてくれ」


「光!」


「ほら、学校行くぞ。さすがに別々には行けねえから、周りがきになるなら先に…」

なんでもないように笑って欲しかったわけじゃない。

無理して笑って欲しかったわけじゃない。


「違うよ」


「香里奈?」


「違う…」

あぁ、もう……

ぐちゃぐちゃだな…。
< 238 / 261 >

この作品をシェア

pagetop