夢色約束
「「はぁ?」」

私と光の声がそろった。


「あら、息ピッタリ」


「あのねぇ、由羅」


「いいじゃない。わが校のお姫様と王子様。そんな二人が主演の劇」

ん?


「お姫様?」


「香里奈?」

光が不思議そうに言う。


「お姫様って誰なの?」

那月くんも教えてくれなかった…


「あぁ…えーと、」


「なんだよ、その話」

あ、光は知らないんだ。


「光ってこの学校王子様らしいよ」

私はからかうように言った。


「なんだそれ」


「反応薄い~」


「興味ねぇ」

興味ない、ねぇ…。


「でも、めずらしいわね、そういう情報に疎い香里奈が知ってるなんて」

む…そんなことないもん


「あぁ、那月くんが教えてくれたんだよ」


「あれ?香里奈って那月くんって呼んでたっけ?」


「あ、うん、最近」


「そうなの?」


「そうだよー」


「…香里奈、帰るぞ」

あれ?

光の声、低くなった?


「あ、うん!」


「じゃあ、西園寺、台本頼むわ」


「はーい」

私は光の手を引かれた。

光…?


「あ、光くん」

呼ばれた光は黙って振り向く。


「大変ね」

由羅はニヤニヤしながら言った。

大変?

なにが…?


「…まあな」

光はわかってるの?

そして、そんなことを聞く前に私たちは教室を出た。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「おかえりなさいませ」


「お嬢様、お荷物を…」

いつものように光が手を出してきた。

あ、そうだ。

私、もう頼らないって決めたんだった。


「いい」

私は気付けばそういっていた。


「え、お嬢様?」

私はスタスタと部屋に向かって歩いて行った。


「お嬢様!」

他の人たちも初めて見た私の反応に目を丸くしていたが、私は気にせず部屋に向かった。


バタン

バフッ

私はベットに飛び込んだ。


ガチャ


「なんだよ、あれ」

やっぱりきたーーーー


「…別に」


「香里奈」


「執事モードは?しなくていいの?」


「ここにはいばらく誰も来ないようにしてる」


「…そう」


「やっぱり俺、何かしたか?」

心配そうに見てくる光。

違うよ。

光が悪いんじゃない。

光から離れられない、弱い私が悪いんだよ。


「…別に」


「じゃあ、なんなんだよ!」

ごめん。

ごめんね、光。


「…なんでも、ない。光には、関係ない」

私は顔も見ずに言った。


「なに、那月に勘違いされそうだからとか?」

ハッと笑った光が言った。


「え?」

何言ってるの?


「今まで名前も知らなかったくせしていきなり那月くんとか呼んで、那月のことが好きだから変に思われたくなくて俺とかかわらないようにしてんの?」

違うよ。

変に思われたくないって思ってるのは、光の方でしょう?


「違う」

違うんだよ。


「なにが」


「変に思われたくない人がいるのは、光の方でしょう?」


「どういうことだよ」

なんで、とぼけるの?


「光は好きな人がいるでしょう?」

ちゃんと、言ってよ。


「…は?」


「私、」

聞いたんだよ。


「なんだよ」

そんなの、


「…なんでもない」

言えるはずも、ないけれど…
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