夢色約束



「でも、それだけじゃないと思うよ」


「え?」


「光がそばにいるのは、責任感とか、優しさとか。それだけじゃなくて、ただそうしたいっていうのもあるんじゃないかな」


「それも優しさだよ」

私がそう言って笑って見せると、那月くんは一瞬顔を歪めた。


「でも、おかしいよな…」


「なにが?」


「光が戻ってきたのは2週間前だろ?」


「うん」


「でも、香里奈ちゃんが婚約したら、光は執事を降りる」


「そうだね」

大体の家はそうだ。

専属がつくのは婚約まで。

そのまま同棲することが多いから。

男女の専属は特に。

私も例にもれず、専属は解除される。

つまり、光のそばにいられるのはあと2か月。


「こんな短期間、光は何で戻ってきたんだ?」

そうだ。

確かにおかしい。

私たちの専属は一度切れている。

お父さんだって手続きやらなんやら、大変なのに。

わざわざ専属にしなくてもよかったじゃない。

それに由羅のことだって…


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