夢色約束


光と由羅の婚約のこと、どうなったのかちゃんとは聞いていない。

光も話そうとしていないし、なんとなく聞くことを避けていたのが事実。

もしも、まだその話があるのならそれこそ面倒なことこの上ない。


「光は、なにを考えてるんだろう…」

そうつぶやくと隣から笑い声が上がった。


「那月くん?」


「光が考えてること?そんなの一つだけだよ」

ははは、と笑った那月くんは自信満々に言った。


「一つ?」


「香里奈ちゃんのことしか考えてないよ、あいつは」


「……それは嘘」


「いやいや、本当だよ」


「嘘だよ」


「なんでそう思うの?」


「だって、光はもっと大きなことを考えてそうじゃない」


「大きなこと?」

那月くんが首を傾げた。


「私じゃ思いつかないようなこと」


「アバウトだなぁ」


「とにかく、私のこと考えてるなんてありえないよ」

あの日のキスの意味は言えないまま。

光はきっと忘れてしまっているんだろう。

あれが初めてだったといえば、笑われちゃうかな…?
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