夢色約束

倒れた光と決まった主役

「光!」


「光!」

倒れていいる光に私はただ駆け寄って名前を呼ぶことしかできなかった。


「お嬢様?大きな声を出されてどうかなさいましたか?」


「光が…!」


「……!お嬢様、お待ちください」

執事さんは、光をベッドまで運んでくれた。


「ん…」


「光!?」


「…か、りな?」

ぼんやりしている光が私を見た。


「大丈夫?」


「ああ…俺……」


「部屋に来たら倒れててビックリしたよ」


「…悪い」


「大丈夫だよ。ちょっと待ってて。私、冷えピタ取ってくるから…」

私は、立ちあがって出口に向かった。

パシッ


「光?」

私は光に腕をつかまれた。


「…悪い」

ハッとした光は慌てて腕を離した。


「…すぐ戻ってくるからね」

本当は誰かに任せてとってきてもらってもいいんだけど、もう夜中だし…ね。

私は急いで冷えピタと、氷枕、スポーツドリンクや薬を用意して、部屋に戻った。


「ちょっと前髪上げて?」

光は前髪をかきあげた。

ドキッ

なんか熱出てるせいで色気ヤバいしっ!


「は、はい!」


「サンキュ」


「これ、薬…て、ご飯食べた?」

そうだよ。

ご飯食べてなくちゃ薬飲めないじゃん。


「…」

無言は肯定。


「はぁ…作ってくるから待ってて?」


「いい」


「光!」

さすがに食べなきゃダメでしょ


「食欲ないし」


「そういう問題じゃない!」


「…ここに、いろよ」

腕をつかまれ、突然言われた。

ドキッ


「な…!」

反則でしょ!!

なにそれ、かわいすぎるんですけど!


「3分」

で、いけるよね?


「…?」


「3分だけ待ってて?リンゴあったから切ってくる。それだったら食べれるでしょう?」


「…2分」

いじけたように言う。


「ふふ、わかったから」

急げば間に合うよね。

私は走ってキッチンに向かった。

えーと、リンゴは…あった!

よかった…光の部屋からキッチンが近くて。

てか、なんか可愛くなってるし…

のくせ、色気ヤバいし…


「なんなのよ…ほんと」

私は自分の顔に熱が集まってるのを感じながらリンゴを切った。


「こんなもんかな…て、ヤバッ急がなきゃ」

私は落とさないようにまた走って部屋に戻った。


「…光?」


「遅い」

いじけたように言う光。


「ごめんって」


「2分、もう経ってる」

光って、熱だすと甘えん坊になるのかな?


「ごめんごめん。でも、切ってきたから、食べて?」


「…ん」

光は起き上がり、リンゴを食べ始めた。


「光、ごめんね」


「なにが」


「さっき。あんなこと言っちゃって」


「…別に」


「怒ってる」


「怒ってない」


「怒ってる」


「…怒ってるよ」

やっぱり…


「いきなり俺のこと拒むし。意味わかんね―こと言うし」

うぅ…


「…光が、好きな人いるって、聞いちゃったの」


「いつ」


「この前、光が告白されてた時?」

目をそらして言った。


「盗み聞き?」


「いや、えーと…ごめんなさい」

そういわれると、反論できない…。


「別に。どうせ那月のせいだろ」

どうせって…


「那月くんが悪いんじゃないって。そのあとも一緒にいてくれたし」


「やっぱ那月のこと好きなんじゃん」

あ、また声が低くなった…?


「違うよ?」


「じゃあなんでいきなり那月くんなんて呼んでんだよ」


「え?だって、那月くんって那月って名前だよね?」

あれ?

違うのかな?


「もしかして、違う名前?」

でも、光もそう呼んでるよね?


「那月であってるよ。でも、苗字とか、あるだろ?」


「え?ああ…それは……私、名前を覚えられなくて、でも、那月くんって、いっつも光の隣にいるじゃない?で、光が那月って呼んでたから…苗字、わかんなくて…」

なんか、言っちゃうと、光のこと、いっつも見てるみたいで恥ずかしい…


「で、那月くん?」


「そういうこと」


「あっそ」

光がそっぽを向いた。


「光?」


「…」


「光ー」


「…」


「光さーん」


「…」

もう!


「光ってば!」

あ、もしかして…


「やっぱり…寝てる」

微妙なタイミング…

光の顔にかかっている前髪をサラリと避ける。





「光…好きだよ…………」


私は気付いていなかった。

この部屋の外で、聞いていた人がいたなんて……







< 26 / 261 >

この作品をシェア

pagetop