夢色約束
「えーと、じゃあ、劇の役はこれで行きます。大道具小道具の人、衣装係の人はこれから大変になると思いますが、みんなで、できるだけ準備していきたいと思っているのでよろしくお願いします。…時間余ったな……じゃあ、これから、衣装や道具づくりに必要なものを各自、集まって書き出してください。できたらもってきてください」

で、いいかな。


「由羅、こっち手伝ってくれる?」


「はーい」

敬礼するようにして由羅は言った。


「じゃあ、始めてください」


「香里奈、なんか慣れてきたね」


「そう?でもまだ緊張するよ。指示出すのって大変だね」


「光くん、すごいよね」


「家でも、よく指示出してるよ。すごいなぁ。ほんと」


「で?」

由羅がニヤニヤと聞いてきた。


「で?って?」


「さっきの電話よ。何話してたの?」


「あぁ、どんな感じ?みたいな?」


「それだけ?」


「うん、あ、あと、本当に主役になっちゃったのか。ってさ」


「え、それだけ?」

やっぱり、そうなるよね?


「うん、みたい。めずらしいよね」


「光くん心配性?」

あぁ…

「確かに、そうかも」

ずっと心配してる気がする…

お父さんみたい…


「香里奈限定でね」


「はは、そんなことないよ。光は優しいし。好きな人もいるみたいだしね」

ズキッ

バカ、なに自分で言って傷ついてんの。


「気づいたの?」

ん?

なにに?


「聞いたんだよ」


「誰に!?」

え…誰にって…


「光?」


「え、光くん告ったの!?」


「そうなの?」

うそ…


「え、ちがうの?」


「私、知らないよ?」

そっか、光。

告白したんだ。


「え?どういうこと?」

ダメ…

まだ教室なんだから、泣いたらダメだ。


「わ、たし…」


「香里奈ちゃん、担任が呼んでたよ!」


「那月、くん」

私を那月くんが呼んだ。

あ、そっか。

助けてくれたんだ。

だって、ずっと教室にいた那月君に頼むくらいなら直接言いに来るもんね。


「あり、がと…私、いってくるね」

私は駆け出した。

那月くんの横を通り過ぎる時、

「事情は俺が言っとくから」

って言ってくれた。


ありがとう。

那月くん。
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