夢色約束
「西園寺、劇のことで、ちょっといいか?」

昼休み、光が由羅のところに来た。

珍しいなぁ~


「あーえーと、」

由羅が私の方を見る。


「あ、いいよ?由羅が帰ってくるまでに食べ終わっとくねー」


「ごめんね?」

由羅はそう言って光の元へ向かった。


「香里奈ちゃん香里奈ちゃん!」

クラスの女の子が私のもとへ寄ってきた。


「どうかしたの?」


「いいの!?」

…なにが?

私は首を傾げる。


「由羅ちゃんと光くん、ふたりにしちゃって」


「え、別に…」


「そばにいなくていいの!?」


「いや、だって、劇のことだって言ってたし…?」


「ヤキモチやかないの!?」

ヤキモチ!?


「ヤキモチって…」


「モヤモヤしない!?」

モヤモヤ…

してないって言ったら嘘になるかな…

でも…


「ふたりがそういう関係だとは聞いてないし…別に心配するようなこともないでしょう?」


「やっぱり余裕があるよねー」

余裕?


「わかる!」

そんなのないよ。


「やっぱり彼女は違うわー」

彼女?


「周りがなんと言っても信じられる絆っていうか!」

信じられる?

絆?

確かに、信じてる。

確かに、絆はあると思うよ?

でも、彼女だったら…余裕があったら…

こんなに、焦ってなんかないよ…。

本当は…不安だらけだよ。







周りがあることないことで盛り上がっているのを私はただ、愛想笑いで、黙って聞いていた。
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