夢色約束
「ごちそうさまでした」


「では、参りましょうか」

光が隣で微笑んだ。


「うん」


「行って参ります、旦那様」


「行ってきます、お父さん」


「いってらっしゃい」

お父さんの笑顔を見て、私たちは家を出た。


「ここまで来れば、いいか……」


「うん」


「じゃあ……ん」

光はそう言って手を差し出した。


「うん」

その手を握る。


「行くぞ、香里奈」


「行こ」

私たちは恋人役をしている。

光は私に男が寄らないため。とか言ってるけど、私は光に女が寄らないためだ。

お父さんには秘密。

ていうか、言えるはずない。

執事とこんなことしてる、なんて。

でも、幸せだから。
この瞬間だけは、近くにいられるから、いいんだ。

私は手に力を込めた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「キャー!」

うっるさ!

光も顔をしかめている。


「光さまー!!!」


「おはようございますぅー!」


「あぁ、カッコイイ……」

相変わらずの人気だな、

廊下でいろんな人とすれ違う。


「おはよう、水月」


「おはよう、水月さん」


「おはよう」

私はいろんな人に挨拶を返す。


「あ、おはよう!香里奈!」

「おはよう、香里奈ちゃん」

すごく挨拶してくれるんだ。

特に、男子。

優しいねぇ。


「はやく、行くぞ」

光は手を離すことなく、手を引いて歩いた。

いつもなら、ここらへんで離すのに……

光…?


ガラッ


「おはよう」

教室につき、挨拶する。


「じゃあな」

光は私の頭にぽんぽんと手を置いて微笑み、席に着いた。


「いーなー水月さん。光さまが笑うのなんてあのこの前だけよね」

ふふふ、嬉しいな。

それが、本当なら。

私もご機嫌で席に着いた。


「おはよ!香里奈!」


「由羅!」

私の声をかけてきたのは西園寺由羅。

この子も西園寺家の一人娘。

そして、私の唯一無二の親友。


「光くん、相変わらずの人気ね」


「うん」


「まあ、あれだけ笑わなかったらあまり心配ないと思うけど……光くんも、大変よねぇ」

光が、大変?


「どうして?」


「んー、わかんなくていいや」


「そうなの?」

言いたく、ないのかな。


「それより、数学の課題、ここわかんなかったの、教えてくれる?」

由羅がノートを出してきた。


「いーよ」

由羅に解説していると、先生が入ってきた。


「おーい席につけ〜」


みんなゾロゾロと席に着いていく。







そしてまた、1日が始まる………。

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