夢色約束
ドキッ

ったく、お前はまた無意識に…!


「はぁ…」

俺はため息をついた。


「ごめっ、光。怒らないで…」

泣きそうな目で言ってくる。


「大丈夫だから。怒ってないよ」


「…ほん、と?」


「ああ。ただ、心配するから、こんなとこで寝るな。先に帰ってろって言ったろ?」


「そう、だけど…」

気まずそうに目をそらす香里奈。


「香里奈?」


「光、怒ってたから…私、何かした?」

香里奈が首を傾げる。

怒ってた?


「まだ、怒ってる?」


「俺、怒ってねぇよ?」

全く怒ってない。


「じゃあ…」

香里奈?


「じゃあ、なんで避けるの?」

そうか…

考えれば、俺が香里奈を避けたことなんてなかった。

香里奈は、避けてる俺を見て怒ってると思ってたのか。


「光、怒ってたんだよね?私、私、なんでもするから…だから…離れていかないで…!」

右手の甲を目に当て涙を隠しながら言う香里奈。

あぁ、ダメだ。

崩れてく。

俺が、隠してきた壁が…全部。


「光…私…!」

グイッ


「きゃ!」

ぎゅっ

俺は、気づけば香里奈の手を引き、自分の腕の中に納めていた。
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