夢色約束

練習

「ねぇ、光」

帰り道、私は光と歩いていた。


「なんだよ」


「劇の練習、付き合ってくれない?」

あれだけダメ出しされてたら、さすがに…


「あれだけ嫌がってたお前がな…」


「だって、やるって決まっちゃったんだから、みんなやる気だし…私たちがちゃんとしないわけにいかないでしょ?」


「お前って、ほんと、負けず嫌いだよな」

はは、と光が笑った。


「バカにしてるー!!」


「してねぇよ」

ポンッと頭に手が置かれた。


「お前はそういうやつだって、わかってるから」

フッと光は笑った。

ずるいよなぁ…

そういうとこ。


「光だって、そうでしょう?」


「あぁ。完ぺきなもの、見せてやるよ」


「私だって、負けないよ?」


「どうだか。あれだけダメだしされてるし…俺の勝ちは見えてるな」


「私だって、今から追い上げるもん!てか、光がうますぎるんだよ!」

なんであんな完ぺきにこなせるのよ!


「演じやすいんだよ。あの執事」


「そう?光に似てるとは思わないけどな…」


「そうか?」


「だって、ストーリーだって、最後はくっつくけど、途中、執事の婚約者が表れて、その執事が主人のもとを離れたり…距離置いたり…光は、私を見捨てたりしないでしょう?」

私は光の顔を覗き込む。


「…ああ」


「ほら、全然違う」

ふふ、と私は笑って見せた。

光の返事までの間と、微かに揺らいだ光の瞳に気づかないフリをして。

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