夢色約束
「あ、の、五月光くん、いますか?」

昼休み。女の子が教室にきて、言った。


「なに」

あー光、不機嫌だなー。

面倒くさそう…


「あ、えっと、これ」

そう言って差し出したのは女の子らしい封筒。


「じゃあ!」

その女の子は光に手紙を押し付け、走っていった。


「あ、最後までは言わないのね」


「待ってる。とかじゃないの?」

言わなくてもだいたいあの子の顔でわかるけど……。


「可哀想に、光くん、そんなの見ないじゃん」


「確かに、光いっつも見ないからなぁ…見ろって言ったら機嫌悪くなるし……。渡してくれた子、可哀想じゃん」

頑張って渡したのに……ねぇ?


「そりゃ、あんたが言ったら不機嫌にもなるわ」

へ?


「なんで?」


「ん?あー、まー、いろいろあるのよ」

いろいろ?


「恒例みたいになってるから、みんなももう興味なさそうだしね」

最初は野次馬のように見ていたみんなも、多すぎてもう気にならなくなったようだ。


「まあ、光くんには、あんたがいるしね」


「私?」


「そ、あんたがいれば十分でしょ」

由羅はそう笑った。


「どういうこと?」


「あんたは、特別ってこと!!」

特別……。

そうなのかな。







でも、そうだといいな…。
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