夢色約束
「じゃあ、夕食の片づけが終わったら、大部屋に行きます」


「うん。先に行ってセリフの確認しとくね」


「では、失礼します」

光は一礼してキッチンに消えた。


「あら、ずいぶんと楽しそうですね」


「早苗さん!」

ヒョッコリと顔を出したのは早苗さん。


「仲直りできたみたいですね」

ふふ、と笑った。


「はい。最近、早苗さんが来てくれなかったから、言うの遅くなっちゃいました」


「ごめんなさい。旦那様に、別の仕事を頼まれていて…」

別の仕事?


「あ、別に責めてるわけじゃないですよ?」

私は安心させるように言った。


「ところで、さっきのお話は一体?」

困ったように笑ってから、早苗さんは切り替えるように言った。


「ああ、文化祭で、私たちの学校は一年生は必ず劇をする伝統があって…私と光がその主役になっちゃって…」

苦笑しながら言う。


「まぁ!それは必ず見に行きますね」


「いいですよ!そんなの」

恥ずかしい!


「光さんとお嬢様の晴れ舞台、見に行かずにはいられませんよ!」

なにそれ…


「本当に、いいですから…」

早苗さんは私の言った言葉にただ笑っているだけで、応えてはくれなかった。

絶対、見に来るな…この人。

なんとなく、確信が持てた。
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