夢色約束
言わなきゃ・・・

私と光が離れるわけじゃない。

これは、お話。

だから、言わなくちゃ・・・

言わなくちゃ、いけないのに・・・

どうして、言葉が出てこないの・・・

会場がざわつき、私もなにも言えないまま、時間は過ぎた。

どうしよ・・・

そのとき・・・



ぎゅ

え・・・?


「あなたとの誓いは忘れていません。私はあなたを思いつづける。たとえ、離れたとしても・・・」

こんなセリフ、あった?


「このままあなたを私の腕に閉じ込めたまま、さらうことができたなら、もう、他にはなにもいらない。

私には、あなたがいてくれれば、それでいい・・・そんなことが、言えたなら、どれだけよかったでしょうか・・・」

体を離した光は微笑んだ。

光・・・?

どうして、そんなに悲しそうな顔をしてるの?

演技なんて、思えないような、そんな顔・・・

光・・・

私、今、聞きたいことがたくさんあるよ。

でも、今は・・・

光が繋いでくれたこと、無駄にしないから。


「私も、覚えているわ。あなたを離さずにいられるのなら、どれだけよかったことでしょう。

ですが、そんなわけにはいかないの・・・私は、この国のプリンセスなのだから・・・!」

アドリブでつなげよう。

無理やりにでも、これからの展開に支障のないように繋げる・・・!


「お嬢様・・・」


「きっと、未来が変わり、私たちが一緒になれる世界があるわ。だから私は、その時かくるまで待つ。いつまでも。それがたとえ、来世だったとしても・・・」


「私は、離れたとしても、どこまでも、あなたについて行きます。

あなたが来世でもう一度出会ってくれるのでしたら、私は・・・そこに、何億人いようと、あなたを見つけだしてみせます」

私たちは抱き合った。

決めていたわけじゃない。

どちらから、というわけでもない。

意識したわけでもない。

ただ・・・体が勝手に動いたんだ。


「待ってるわ」


「ここに、誓います。私はあなたと過ごせる未来を、見つけだします」


「忘れないで・・・」


「もちろんです」

そして、私たちは違う方向に去って行った。
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