早水百合香は諦めない。 ①早水百合香の非日常的日常
 と、そんな和真の近くから、聞き覚えのあるメロディーが流れてきた。

「な!?」

もう一瞬の内に理解した。教室の後ろのドアの陰から、それは鳴り響いている。いるのだ、そこに。あの女、早水百合香が。

「私はここにいるよ?」

ドアの端から斜め45度の角度で顔をちょこっと出してきた。ゆるふわというのだろうか、内巻きセミロングの髪は風に当たり、揺れている。その姿を見た時、和真は全身鳥肌が立つのを感じた。いや、鳥肌が立った。

「百、百合香…」
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