『私』だけを見て欲しい
動き出したベッドに合わせて移動する。
検査後の疲れも見せずに、母は暫く彼と話した。
「私のことなら心配いりません。…すぐに元気になりますから…」
朗らかな笑顔を見せる。
山崎さんの顔も崩れる。
この二人はどうして、こんなに優しい笑顔でいられるの……
「結衣…」
ゆっくりと母が手招く。
それに合わせるように顔を近づけると、ボソッと小声で囁いた。
「あんた…こんな人と結婚すればいいのよ…」
ギョッとするようなことを言う。
のけぞる私にウインクを見せて、母はICUに入っていったーーーー。
「お母さん、今なんて…?」
山崎さんの言葉に振り返る。
『こんな人と結婚すればいいのよ…』
母の言葉を、この人には伝えられない…。
「山崎さんのこと…いい人ね…って」
結婚すればいいと思うほど、『いい人』
つまりはそういう事だ。
「…もういいでしょ…お帰り下さい…」
この後、医師との話し合いがある。
そこに、この人を立ち合わせてはいけない。
この人は……部外者だから。
「…俺は邪魔か?…」
痛い言葉を放たれる。
その言葉を意味を理解した上で、こう言い返した。
「…邪魔です…いないで欲しい…」
泣き出さないように堪えた。
ヘンに表情が歪まないように、キュッと奥歯を噛む。
唇の端に力を入れて、微笑むような口元を作った。
(お願い…早くどっか行って…!)
臆病になってる訳じゃない。
この人の未来を、私の過去と一緒にしたくないから。
検査後の疲れも見せずに、母は暫く彼と話した。
「私のことなら心配いりません。…すぐに元気になりますから…」
朗らかな笑顔を見せる。
山崎さんの顔も崩れる。
この二人はどうして、こんなに優しい笑顔でいられるの……
「結衣…」
ゆっくりと母が手招く。
それに合わせるように顔を近づけると、ボソッと小声で囁いた。
「あんた…こんな人と結婚すればいいのよ…」
ギョッとするようなことを言う。
のけぞる私にウインクを見せて、母はICUに入っていったーーーー。
「お母さん、今なんて…?」
山崎さんの言葉に振り返る。
『こんな人と結婚すればいいのよ…』
母の言葉を、この人には伝えられない…。
「山崎さんのこと…いい人ね…って」
結婚すればいいと思うほど、『いい人』
つまりはそういう事だ。
「…もういいでしょ…お帰り下さい…」
この後、医師との話し合いがある。
そこに、この人を立ち合わせてはいけない。
この人は……部外者だから。
「…俺は邪魔か?…」
痛い言葉を放たれる。
その言葉を意味を理解した上で、こう言い返した。
「…邪魔です…いないで欲しい…」
泣き出さないように堪えた。
ヘンに表情が歪まないように、キュッと奥歯を噛む。
唇の端に力を入れて、微笑むような口元を作った。
(お願い…早くどっか行って…!)
臆病になってる訳じゃない。
この人の未来を、私の過去と一緒にしたくないから。