『私』だけを見て欲しい
月曜日の早朝6時。
緊張のあまり、殆ど眠れなくて目が覚めた。
久しぶりにゆっくり眠ってもいいハズだったのに、やはり習慣には逆らえなかった…。

泰が「お腹が痛い」と言った時には、何て言おうか…と考えながら朝ご飯を作った。
「頭が痛い」と言いだしたら、ムリをせず休ませよう…と決めた。

…なのに、今朝に限って、そのどちらも言わない。

「…体調いいの?」

先回りして聞いた。
泰は面倒くさそうに舌を打ち、「…別に」と言い返した。

月末には試験がある。
休んだらそれに響くというのは、泰が一番よく分かってる。

でも、もしも今日、何かあったら……


「お母さん…泰と一緒に、駅まで行こうかな…」

学校は駅の近く。
この子がどんなふうに通学するか、見てみたいと思った。

「おばあちゃんの病院へ寄ってから仕事行くし、丁度いいから!」

からかう友達がいたら、どんなふうに絡んでくるのか見てやろうと思ってた。
でも…

「ウザいからヤダ!ゼッタイ一緒に来るな!!」

泰は立ち上がって逃げた。
私が言う事や、やる事は、全てが気に入らないらしい。

いつからこんなふうに拒絶するようになったんだろう…。
小学生だった頃は、まだ甘える事だってあったのに…。

(反抗期の子供って難しい…)

泰と二人きりにされるのを、母が嫌がってた理由がやっと分かる。
何かにつけ反抗されると、ますます自信が失くなってしまう。
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