『私』だけを見て欲しい
怒声のような罵声のような声に混じり、甲高い女の子の声もする。
自分が子供だった頃も同じように騒々しかったとハズなのに、そんなことは棚に上げて、少しうるさい…と思った。

こんな賑やかな声の中で、今日1日、泰はどんなふうに過ごしただろう。
例え今日が穏やかでも、毎日がそうとは限らない。

誰か一人でもいい。
あの子の味方が、学校内にいて欲しい…。

バタバタ…と廊下を走る音が聞こえた。
教室棟の方から子供が走ってくる。
その子を見て驚いた。


(泰…⁉︎ )

怯えるような表情でいる。
後ろから追いかけて来る子供達に捕まらないように、必死で逃げてる。
追いかけてる方は楽しそうで、いかにも遊び半分のようだけど…。

(ダメ…!あの顔はマズい…!)

傷つけても平気でいる子供の顔。
反省なんか絶対しない。
傷つけられたことなんてない者達が、いつも付けてる仮面…。

ダッシュして走り寄った。
泰はきっと、こんな私の行動すらもイヤがると思う。
でも、親として、保護者として、私はこの現場を見て見ぬ振りはできない!


「やめて!!」

大きな声で怒鳴った。
泰が目を丸くして驚く。
後ろから走ってきた子供達は立ち止まり、ヤベッ…という顔を見せた。

ドクドク…と心臓が早打ちする。
今から先、私がつける仮面は、親としての強い顔。
自分の子供を守り抜く。
何があっても、傷つけたりさせない。

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