『私』だけを見て欲しい
「…ウチの子に何の用⁉︎ なんでそんなに追い回すの⁉︎ 」

忘れられない子供の頃。
同じ目に遭った。
逃げ出すしか方法がなかった。
でも、ホントは向かっていきたかった。
自分にヒドい事をする同級生たちに…「やめて!」と叫びたかった…。

「泰良が何かしたの⁉︎ それなら私が謝る!でも、そうじゃなければ今後一切、追いかけたりからかったりしないで!あんた達の親だって、自分の子供がそんな対象になりたいって思ってないよ!今してる事は、親を悲しませるだけ!…絶対にしないで!!」


……最後の方は叫んでた。
強い親の顔が泣き崩れそうになる。

(泣いたらダメ…負けだから……!)

胸の前でぎゅっと手を強く握りしめた。
体の中に響く声。


『どんなお前も好きだぞ…』

思い起こす優しい人の顔。
あの人が自信をくれたから、私はきっと大丈夫。
強い…親でいられる…。

唇を噛んで睨み続けた。
追いかけてきた子供達が逃げてく。
…追ってまでは行かなくていい。
私が追いつきたいのは、今、目の前にいる子供…

「…泰……」

驚いたまま私のことを眺めてる。
どうしてここにいるのかも、きっと分かってない。
そんな子の側に近づき、ぽん…と髪に触れた。

「……今まで…よく耐えたね…」


絶賛するよ。さすが我が子だ…って。

真似できない。
あんたはホントにエラい…。

「…もう我慢しなくていいから…お母さんから、先生や保護者に訴える…」
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