『私』だけを見て欲しい
相変わらずな機関銃トークに笑いだす。
金井ちゃんの明るさに、これまで何度癒されてきたことか…。

「…大丈夫。体調崩したのは私じゃないから」

母のことを話した。
金井ちゃんは驚いて、「仕事はどうするの⁉︎ 」と聞いた。

「多分、辞めることになると思う。これまでと同じように残業とかもできないし、母にムリさせて、また倒れられても困るから…」
「ええ〜っ、残念っ!結衣とはずっと働けると思ってたのに…」

同期で入った仲間達は、いろんな事情からスグに仕事を辞めた。
残ってるのは私と金井ちゃんだけ。
だから、とても残念がられた。

「結衣がいなくなるんじゃつまんない!なんとか続けられないの⁉︎ 」
「気持ちは有り難いけど…やっぱりここは遠いから…」

電車を乗り継いでも1時間近くかかる。
通勤時間をせめて半分に短縮したい。

「マネージャーには相談したの⁉︎ あの人上司だから、なんとかしてくれるかもしれないよ⁉︎ 」
「…まさか。上司でもどうにもならないよ。これは…」

相談なんかするつもりもない。
とにかく「辞めます…」…そう言うだけ。

「ええ〜っ、じゃあ他の人に頼んでみる!」
「いいよ!そんな事しないで!私、辞めることに未練ないから…」

ウソつきの仮面をつけた。
今日から私はウソしかつかない。
今まで自分が一番嫌いだったこと。
誰に対しても、ウソはつかないって決めてきた。
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