『私』だけを見て欲しい
譲れないもの…
…あの後、紗世ちゃんが来て、話は一時中断となった。

「また後で。…このディスプレイ、お前の力で夏仕様に変えといてくれ」

言うだけ言って上がってく。
完璧に仕上がってる庭を夏仕様に?


(…そんなのしたくない…このままで十分キレイなのに…)

電話も取らずに眺めてた。
今日は定時に上がると約束した。
だから、他の仕事をしてる余裕はない。

(仕事辞めるから、いないのと同じだと思ってもらわないと…)


…始業前、紗世ちゃんには話した。

「私…家庭の事情で今月いっぱいで退職するの。だから、これからは紗世ちゃんがリーダーシップを取って欲しい。私も極力フォローする。でも、中心になって動くのは紗世ちゃんよ…」

今まで甘えてた分を取り戻すのは難しいと思う。
でも、頑張ってくれないと、マネージャーが困る…。

「佐久田さーん、辞めないでー!」

甘えた声出してもダメ。もう決めたから。

「…紗世ちゃんならできるよ。いつもみたいに明るく皆を引っ張ってって」

引き継ぐ量は大したことない。
だから、今日はコレをやらせてね…とディスプレイを指さした。

「すごぉい!佐久田さんが作ったの⁉︎ 」
「えっ⁉︎ …あ…ええ…まぁ…」

マネージャーの為にウソをつく。
こんな甘々なディスプレイ、自分が作ったとバレるのはイヤだろうから。

「ステキ…鳥の鳴き声が聞こえてきそう…」
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