『私』だけを見て欲しい
じ…と佇んでいたくなる。
そんな気持ちにさせられるディスプレイ。

(コレを夏仕様に変えるのか…)

花を刺激的な色にして、テーブルの上にガラス鉢を飾った。中に入れたのは、白い石とプラスチックでできたキンギョ。
イスの背に麦わら帽子。サングラスも掛けてみるか…


1時間もしないうちに、春景色が夏に変わる。

寄せ植えしてた頃の勘が戻る。
赤と白と紫は夏のテッパン。
コレに青と黄と緑をプラスすればいい。



「……ふーん。大したものねぇ…」

聞いたことのある声にビクついた。
振り向くと、見たことのある美人。メガネの人も一緒だ…。

「あ…『美粧』の…」

営業の人。
確か加賀谷さんと戸部さん…と言った…。

「い…いらっしゃいませ…!」

緊張しながら立ち上がった。
初対面での自分の態度を思い出す。
何も知らないのにペラペラ喋った。
おかげで、マネージャーに恥をかかせた。

「こんにちは。先日は商談に参加して頂いてありがとう。あなたのお陰で、沢山注文もらえたわ!」

加賀谷さんが微笑む。
美人は得。どんな顔もキレイに見えるから。

「…今日も商談ですか?マネージャーなら上の事務所にいますけど…」

急な来客に戸惑う。
メーカーさんがフロアに来ることは殆どないから。

「その山崎さんに呼ばれたのよ。貴女が作るディスプレイを見に来てやって欲しいって…」
「私の…ディスプレイを!?でも、これは…」
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