『私』だけを見て欲しい
「助けられるのも嫌か⁉︎ 」

苦しくなるような質問をする。
答えに詰まる。
どちらもホントは嬉しい。
でも、素直にそうとは言えない……


「…迷惑です…見られるのも…助けられるのも……」


……ホントは…ずっと誰かに見て欲しかった…。

母親でも娘でも、会社員でもない私を…。

『佐久田結衣』本人を。

何からも縛られず、
何もかも忘れて、
自由に誰かを好きになりたかった…。

思いを通わせて、
その人だけを見つめて、
幸せに…
なりたかった……

誰に祝福されなくてもいい。
認めてもらえなくてもいい。

あの頃と同じように
1人の人の為に生きたかった…


…でも、今はもうできない。
私には…守っていかなくてはならないものがある…。

譲れないものや優先しなければならないものが多すぎる…。

子供のままでいられない。

私は…


母であり


娘だから……



「…だからもう…構わないで…。これ以上…私のことを惑わさないで……!」

止まらなくなるから。
誰かを好きになったら、他のこと何も見えなくなるから。

家族を大事にしておきたいの。

家の中だけは…乱したくない…!

(こんなに好きなのに…伝えられもしないなんて…)


恋なんかに落ちなければ良かった。
この人の別の顔なんて、知らなければ良かった。
手に触れなければ良かった。
優しさを…感じなければ良かった。


(そしたら、こんな…苦しい思い…しなかったのに……)
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