『私』だけを見て欲しい
子供ならして欲しくなかったこと。
それを…つい、やってしまった…。

マネージャーは黙ったまま、私の話を聞いてた。
時々、笑いながらも、後半はマジメな顔つきになった。

「…お前が出ていって、良かったんじゃないのか⁉︎ 俺が子供なら、有難いと思うな…そんなに思ってくれて…」

ほっ…とする言葉をくれる。
その後で、こんな提案をした。


「…会わせろ」
「えっ…?」
「お前の子供を俺に会わせろ。今夜。お前ん家に行く」
「えっ…⁉︎ や…あの、それは幾ら何でも急過ぎ……」

待って、待って!
まだ何も始まってないのに!

「いいから。俺に任せろ。こう見えても俺は、誰とでも友達になれるんだ」

泊まり歩いてたからな…って、それは自慢にもならないでしょ⁉︎

「よし、じゃあ定時で上がれるように仕事に戻ろう。ちょっと手貸してくれ。体が起こしたい」
「は…はい!」

肩に手を回す。
回転しながら足を下ろした彼の上半身が被さる。
顔が近づく。
ゆっくりと深い、キスをしてしまった。


…さっきよりも確実に距離が縮まる。
締め付けられるような胸の苦しさに襲われる。


(もうダメ…絶対に逃げれない…)

深みにハマってく。
こんな甘さを知ったら、離れたくない。

何もかも無くなってもいい。
この人がいてくれたら、それでいい。


お母さん…
泰…

(ごめんね…私を許して…)
< 144 / 176 >

この作品をシェア

pagetop