『私』だけを見て欲しい
トモダチの顔
退勤時間まで、私は紗世ちゃんの質問攻めにあった。

「…さっきのケンカ、何なんですか⁉︎ マネージャーと佐久田さんって、どういう仲なんですか⁉︎ 」

質問は仕事の内容だけにして…と言うのに聞いてくれない。
そういう事に関してはスグに動く。

この間の新歓パーティーの時も同じ。
だからワルい噂が立つんだ。

「紗世ちゃん…」

辟易する。
自分のことなんてどうでもいい。
とにかく今は、この子を一人前にしないと…。

「質問は仕事のことだけにして!私は今月末で辞めるって言ったでしょ!」

覚悟決めなさい。
ここを任せれるのは、貴女しかいないんだから。

「そんなコト…急に言われても…」

半泣きになる。
甘えてばかりいたから、反動が大きいんだ。

「少しずつでいいから、前に進もうと思って。紗世ちゃんならデキる。私はそう信じてる!」

お母さんも、妻もやりながら、トモダチとも付き合える。
オシャレにも敏感だし、いろんな顔を使い分けれてる。
それだけで私なんかより数倍デキる女だ。

「後押しするから、一緒に進もう!」

前任者のリーダーから仕事を任された時、同じ言葉を言われた。
その人は結婚して、違う支社に行った。

今、私がここで仕事をしてられるのは、その人の励ましがあったから。
だから同じように紗世ちゃんも励ます。

部下だけど、子供と同じ。トモダチと同じ。
一緒に成長していく仲間。
だから、前を向いて欲しい…。
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